みなさん、はじめまして!「へんてこアーティスト図鑑」にようこそ!
この「へんてこアーティスト図鑑」は、美術大学+かながわ夢絵コンテスト出身の佐野がお送りする、アーティスト紹介のコラムです。アーティストに敬愛の意を込めながら、「わぁー!へんてこ!」なポイントを紹介したいと思っています。
文・絵:佐野 笑子(東京造形大学 大学院)
突然ですが、あなたは「ホコリ(埃)」が好きですか?
一般的には、不潔な汚れとして扱われがちなので、おそらく好きではない方が多いかと思います。
しかし、そんなホコリをこよなく愛した画家がいるのです。
そんなへんてこアーティストが、ジョルジョ・モランディです!
ジョルジョ・モランディってどんな人?
モランディは、イタリアのボローニャというところで、1890年に生まれました。
小さな頃から絵を描くのが好きで、17歳のときには美術アカデミーに入学しています。そこから、73歳までの生涯のほとんどを、ボローニャのフォンダッツァ通りにあるアトリエの薄暗い部屋に閉じこもって、「静物」を主としたテーマの絵を描き続けました。
身の回りにあるありふれた瓶や水差しなどのモチーフや風景を、繰り返し何枚も何枚も修行僧のように描き続けるモランディは、「孤高の画家」と呼ばれています。
周りの評価を全く気にしない一本気の性格をしていたことがうかがえますね!
モランディの作品ってどんな作品?
さて、モランディの「静物」をテーマにした作品を見てみましょう。
(画像はモランディの作品をイラストに描いたものです。)
テーブルの真ん中にいくつかの瓶や水差しなどのモチーフを密着させて配置した、とてもシンプルな構図です。
色数は少なく、落ち着いた淡い画面ですが、よく見ると筆のタッチを活かした質感が魅力的です。
これらの特徴が、単なる静物画ではない、静かで瞑想的な絵画世界を作り上げています。
ただ、「静物」をテーマにした作品を何枚か見続けていくにつれ、「パッと見ると同じような作品がいっぱいだけど、モランディは、モチーフを使って何を表現したかったの?」と思えてきませんか?
モランディはモチーフをコントロールする天才!
結論から言うと、「光と構図」をモランディは表現したかったと言われています。
モランディは、自分が納得いく光と構図を実現させるために、モチーフに自分好みの色を塗るなど、作品を描く以前に、モチーフへ執拗なこだわりを持っていました。あくまでも、モチーフを「光と構図」の表現のためにコントロールしたいモランディの志向は、いよいよ冒頭でチラッとお話した、ホコリへの愛着へ繋がっていくのです。
ホコリを愛してやまない画家モランディから学ぶ、視点の変え方
モランディは、てかてかと光るモチーフが嫌いでした。そこで、モランディはモチーフに自分好みの色を塗る以外の方法を思いつきます。
「そうだ!光沢をもっと和らげるために、モチーフの上にホコリをかぶせよう!」
こうして、アトリエを訪れた友人が驚くほどに、ホコリを愛してやまない画家モランディが誕生したのです!
やがて、不潔な汚れの象徴である「ホコリ」は、モランディによって芸術に昇華させられました。
ホコリだけに、自分のことを誇りに思えちゃいますね。
・・・なんて寒くなるダジャレはさておき、モランディのような斬新なモノの見方、ぜひ学んでいきたいですね!