夢絵が生まれた場所へ4:横浜市立白幡小学校 関谷道代校長・菊田悦子先生


2016年度に開催された「第21回 かながわ夢絵コンテスト」に、全校児童の作品を応募してくださった白幡小学校。その数なんと約700点!その学校全体でのお取り組みについて、夢絵コンテスト事務局のスタッフが先生方にお話を伺ってきました。

お話を聞いた人:
横浜市立白幡小学校 関谷道代先生(校長)・菊田悦子先生(図工専科/3学年以上)

「夢」は 子どもたちの心を耕す大切な要素

―ご応募時、ご担当の先生からお電話を頂きまして。「作品数がとても多いので、郵送ではなく2人がかりで持ち込みをしたいのですが…」と。一体、どれだけの量が来るのか、事務局スタッフみんなでドキドキ、ワクワクしながらお迎えしたことを記憶しています。

横浜市立白幡小学校 関谷校長 1関谷校長:2016年度は白幡小創立80周年の節目の年。PTAや地域の方々に支えられてここまで来ることができたので、その繋がりを何より大切にしたいと考え、保護者をお招きして行った親子でオーケストラの生演奏を体感するコンサートや、子どもたちの描いたフラッグアートを地元商店街に掲示したイベントなど、まちぐるみでの様々な記念行事を実施しました。

その取り組みの一つとして、今年度『かながわ夢絵コンテスト』にも参加したのですが、コンテスト名にある「夢」という言葉は、「未来へ夢を育む」というビジョンを掲げている白幡小にとってとても大切にしているキーワード。「夢」は子どもたちの心、つまり素地を育て、耕すための大切な要素だと考えているため、日頃から“子どもたちに「夢」を語らせる機会”を多く持つように取り組んでいます。

―なるほど、実際に学校にお邪魔して、校内に掲示されているスローガンやポスターなど、たくさんの「夢」という文字を拝見でき、学校全体で大切にされている言葉であることがよく伝わってきます。

関谷校長:はい。ですから、この節目の機会に“全校児童みんなで、自分の「夢」を描く“という取り組みは、ぴったりだと思ったのです。白幡小には図工専科の先生(3年生以上指導)もいらっしゃいますし、先生方と相談しながら、各クラスで図工の授業を5~6時間ほど使って実施することにしました。

横浜市立白幡小学校 80周年 スローガン

画用紙からはみ出すぐらいの 大きな「夢」を描こう!

―今回ご応募頂いた作品は、図工の授業の中でお取り組み頂いたのですね。どのようなご指導をされたのか、図工専科の先生のお話をお伺いさせてください。

横浜市立白幡小学校 図工専科 菊田先生菊田先生(図工専科):クラスには、絵を描くことが得意なお子さんも、苦手なお子さんもいます。なので、まずは「絵を描くことを好きになる」ように導いています。例えば、ピカソの話をして、好きなものを、自由に、大胆に描いたりして楽しんでみたり…。それから、授業では大きめの画用紙を使い、クレヨンと絵具を使って描くようにしています。色づけする時に色を混ぜて塗ることを指導していますが、すべてを絵具だけで仕上げることは、小学生には少々難しいみたいで、クレヨンに助けてもらっています。

そして、私はいつも子どもたちに「はみ出して描こう!」と言っています。そうすると、とても奥行き感のある絵が完成するんです。今回の「夢」をテーマに描いたときは、まだ将来のことや自分の夢が不明確で筆の進まないお子さんもいましたから、「画用紙の中に無理に収めようとしなくてもいいから、自分の気持ちを自由に描いてごらん」と伝えました。完成した作品を並べてみたら、自分で描いた自分の顔がみんなそれぞれによく似ていて、面白いなぁって思いました。

―全校児童の夢絵を体育館に一斉展示されたそうですね。

関谷校長:そうなんですよ!11月12日に行われた記念式典の際、みんなの絵を体育館に展示しました。カラフルな絵がずらりと並び、それはもう圧巻で、来賓の方からも大変好評でした。

横浜市立白幡小学校 80周年式典

そして、式典後にすべての作品を外して夢絵コンテストに応募しました。応募締切日が11月28日(2016年度)だったので、確かギリギリでしたよね(笑)。子どもたちの夢を描いた絵が、自分の学校の記念式典を彩って、その次に絵画コンテストに参加することに繋がって、さらに受賞や入選として評価されて子どもたちに自信を与えることもできました。

私たち白幡小では、学校運営をする上で、汎用的な力の育成・活用を大切にしています。1つのアクションを1で終わらせるのではなく、汎用的な活動に拡げていけないかという視点を常に持っているので、それを学校全体で実践できたような感じでしょうか。今回の子どもたちの夢絵は、まさに一石二鳥にとどまらず、三鳥くらいの拡がりだったかもしれませんね(笑)。

「夢」未来はひとりじゃ創れない

―それでは最後に、校長先生の夢を教えてください。

関谷校長:白幡小では、地域参画コミュニティ型学校運営を掲げて、「社会に開かれた教育課程」を実践しています。それにより、私たちが目指す姿は、すべての子どもたちに学力(学ぶ意欲・考える力)と人間関係力(協働して学び合う力)をつけること。

横浜市立白幡小学校 関谷校長 2

社会が、世界が、とても速いスピードで変化していく中で、私は子どもたちが白幡小学校の生活の中で培ったスピリッツを大人になっても自ら引き出せるようになってくれたらうれしいと思っています。

横浜市立白幡小学校 「未来はひとりじゃ創れない」80周年記念のエンブレムを手掛けてくださったアーティストの井上文太氏からデザインとともに贈られた「夢 未来はひとりじゃ創れない」という言葉に、私たちが大切にしている「未来は言葉で創られる(=自分の夢を口にする)」「心は感動で創られる(=たくさんの芸術や体験を通じて心を耕す)」を加えて書いたものを、校長室に飾っています。

私自身も様々な人や地域・企業と繋がり、それぞれの得意・不得意な部分のデコボコを補い合いながら人間関係力を拡げていきたい…、それが私の夢です。

―本日は貴重なお話を聞かせいただき、ありがとうございました。

取材・文:高垣香里/NPOこどもネットミュージアム事務局
写真:廣瀬郁実/NPOこどもネットミュージアム事務局