夢絵のうまれた場所へ 2:横浜市立保土ヶ谷小学校 土田健勝先生


2015年度に開催された「夢絵コンテスト」にて、2人の入選者を輩出した保土ヶ谷小学校。受賞者の通う小学校の先生にお話を伺ってきました。

お話を聞いた人:
横浜市立保土ヶ谷小学校 教諭 土田 健勝 先生

(インタビュー・文:井上栞菜子/情報科学専門学校1年)

入賞したことで、認められる機会を得た

―保土ヶ谷小学校さんは毎年、このコンテストに応募し続けてくださっているんですよね。そうして参加し続けられる理由があれば、教えて頂きたいです。

土田先生:こちらのコンテストへ送る作品は毎年夏休みの自由課題として出しているんですが、夢というテーマは子どもが描きやすい、縛りの少ないテーマだと思います。この子どもに対する自由度が、毎年参加出来る理由ですね。

―先生は描かれた作品を集める際、その作品を見る機会があると思います。子どもたちの作品を見て、何か感想がありましたらお聞かせください。

土田先生:去年参加した子達は学校でも絵を描いているのをよく見かけるくらい、元々絵を描くことが好きな子が多くて。皆を見ていると、すごくのびのびと描いているのが伝わってきますね。それに、どの子の絵からも自由に描くことが出来ているなあ、と感じます。

―作品が入賞した時の、生徒さん達の反応はどうでしたか?

土田先生:嬉しそうでしたね。入賞した二人は学校の朝会で表彰されたんですが、自分の描いた絵がこうして賞をもらったり、皆から拍手を受けたりするのは、本人達にとってこれからもっと絵を好きになる励みになったと思います。それに入賞したことで、いつも自由帳に絵を描くのとは違う、他の人に自分の表現を発表する機会が出来たんじゃないかなあ。

横浜市立保土ヶ谷小学校 土田 健勝先生

良い意味で常識のない、子どもの絵

―夢絵コンテストは、子供に夢を表現してもらうことで自信や喜びを与えるキッカケになりたいという願いを持っています。そこで先生が今までに、自信や喜びを得た経験を教えて頂きたいです。

土田先生:そうですね…。教師としてそういうものを感じたのは、子ども達が自由に表現することを恥ずかしがったり遠慮したりしないで、とりあえずやってみよう!と物事にチャレンジしてくれるようになった時ですかね。

自分が担当していた児童達は、例えばまだその教室に慣れていない4月頃にクラス全体でのレクリエーションを始めようとすると「こうしていい?」とか「これでいい?」って僕に聞いてきていました。僕が「いいんじゃない?」ってOKを出してから行動を始めるんですね。それが何ヶ月かすると、皆段々自分から動くようになって、僕の手伝いなしに企画を立ち上げて、自分達で考えて行動するようになっていくんです。

「こうしていい?」じゃなくて「こうしたよ」と報告された時は、子ども達が少しずつ自立していたことに気付けて嬉しかったですね。

横浜市立保土ヶ谷小学校 土田 健勝先生

―先生から見て、子どもの描いた絵は大人の描いた絵と比べて何か違うと感じる部分はありますか?

土田先生:子どもの絵は、良い意味で常識がないと思いますね。例えば絵のテーマが動物なら、大人が描くものはどうしても正解を求めてしまうというか、本物の動物に近づけて描こうとしている気がします。が、子どもは真逆。大人とは逆の方向に行って、普通に考えたら有り得ないような描き方をしている時がありますよね。本物に近付けなくても、何かに囚われずに、自分で思ったような絵を描けるのは子どもならではの良い所だと思います。

子どもと大人というか、高学年と低学年でも似たような感じ。高学年の子は白紙をバン!と出されて描いてと言われるよりも、あらかじめテーマをハッキリさせられた方が描きやすい子が多いみたいです。逆に低学年の子は、白紙の方が自由に描けているかなあ。空想よりも知識が多いのか、知識よりも空想力が高いのか、みたいな。色々なものに対する知識が増えた高学年の子は、頭の中にある記憶やこれまでの体験と絵のテーマを結びつける方が描きやすいこともあるし、これから知識が増えていく低学年の子は反対に、記憶を描くよりも自分の今持っている空想を思い思いに描き出すことが得意かもしれませんね。

横浜市立保土ヶ谷小学校 土田 健勝先生

想像力を持ち続けて

―それでは最後に、先生から生徒さん達へ、そしてこのコンテストに今まで参加していた、またはこれから参加しようと考えている生徒さん達へ、メッセージをお願いします。

土田先生:いっぱい行動してほしいです。それに何かに挑戦してみるといった、回り道もしてほしい。そんな回り道が、この後の未来に繋がっていくはずなので。そうしたチャレンジの中で得られる緊張感を持って、失敗や無駄を怖がらずに行動していってください。

絵を描く楽しさや空想・想像する楽しさは、そのまま想像し続けないといつのまにか少しずつ少しずつ、消えてしまうものです。想像力を潰さず、その力を持ち続けてほしい。そして、色んな経験をしてもらいたいです。

―本日はありがとうございました!

土田先生:こちらこそ、ありがとうございました。

インタビューを終えて
井上栞菜子/情報科学専門学校1年(写真右)

横浜市立保土ヶ谷小学校 土田 健勝先生(中央)、井上栞菜子(右)、横山さくら(左)

初めてのインタビュー経験で緊張してしまい、ガチガチに固まっていた私の質問に笑顔で答えてくれる、とても気さくな先生でした。このコンテストについて、そして子供達について、先生という立場からお聞きすることの出来たお話は大変興味深く、貴重な経験を得られたと感じています。失敗することは悪いことではないのだと、このインタビューを通じて気付かされました。私もこれからは挑戦することを怖がらず、色んな経験を積んでいきたいと思います。

取材サポート:横山さくら/情報科学専門学校1年(写真左)
学生指導・撮影:高垣香里/NPOこどもネットミュージアム